承平の燗とお水

築地の名店「鳥好」で「承平」の燗2合

承平の特徴

高知県の土佐鶴酒造のスタンダード銘柄。辛口の味わいで、冷から燗まで対応する懐の深さがあります。

築地の名店「鳥好」について

鳥好の外観
なんとも入りにくい、鳥好の外観

新富町駅から歩いて程なくたどり着ける築地の「鳥やき」のお店。

たまたま珍しく近辺に来たので、せっかくなので東京の地元感覚を味わえるような、一見さんお断りっぽいお店に入ろう、と考えていたところ、おあつらえ向きのお店を発見。

屋号をみると、さる知人に教えていただいた「鳥やき」のお店である「鳥好」であることに気づきます。お店から出てくる人を見て、「極端な値段ではなさそうだな」と判断し、人を寄せ付けない磨りガラスの戸を勇気を出してゆっくり開けました。

職人気質そうな佇まいながら、清潔な割烹着を洒脱に着こなすご主人と、ベリーショートで気品のある奥様が笑顔で出迎えてくださいます。端の席は広々としていいですよ、と案内されてカウンターの席に座ります。

鳥好の突き出し
突き出しの二本目は大根おろしにうずらの卵。消化に配慮されています。

値段の書いてないメニューを見て驚きつつ、日本酒と鳥やき4種を頼みます。

日本酒は土佐鶴酒造のもので、「承平」と「千寿」の二種。承平の飲み方は何がよいですか、と聞くと「常温か燗で」とのお返し。11月の築地は寒く、燗でお願いしました。

注文が終わって店を見渡す余裕が出てくると、なんとも清潔で気品のある内装であることに気づきます。常連さんも品があるかたで、焼きに忙しい大将とゆったりと話をしています。

しばらくすると、燗につけられた承平とお水、突き出しのお新香が出てきます。お新香は盛り付けも大変に綺麗で品があります。カブと大根、みょうが、白菜、きゅうりが盛られます。

突き出しのお新香
突き出しのお新香

お新香で燗の承平を味わうと、燗酒の熱でフレッシュな野菜の香りが際立ち、なんとも幸せな芳香が立ち上がります。

ほどなくすると、ぽんと大将からカウンター越しに一品供されます。重厚感のある器におおぶりの合鴨です。

これがプリップリで、少し噛むと肉汁がたっぷり出てくる、驚くべき美味しさです。卓上の山椒と七味で香りを変えつつゆっくりと楽しみます。

しばらくすると、手羽先、つくね、ねぎまが焼き上がりました。常連さんの会話を聞きつつゆっくり味わっていると、「こんな若いお客さんがいるだけ華があっていいよね」と少しづつ会話の対象に入れられます。

合鴨の鳥やき
合鴨の鳥やき

このお店は奥様の両親が始めたお店で、60年以上の歴史がある。
戦後生まれの大将は、20代のころ北海道から上京してすぐにこの店に修業に入り、さらに池袋の店で働き出した。

いまは奥様の兄を継いで今の大将が店を取り仕切っている。奥様は70になるそうですが、凛とした姿勢でテキパキと仕事されています。

あまりにうまい焼き鳥は、どうやって作っているのかと思うのですが、特段変わった鳥を使っているわけではなく、代々決まった仕入先から仕入れているとのこと。

とにかく、合鴨といいねぎまといい、肉がびっくりするほどうまいのです。

つくねとねぎま
つくねとねぎま

つくねは、おそらくヤゲン軟骨も入っているのか、ぷりぷりしすぎず、ざっくりとした歯ごたえと、濃厚で強烈な旨味が味わえます。

追加のお酒も燗で、お水も一緒にもらいます。おかわりは燗にしすぎて熱くなりすぎたのはご愛嬌。

隣の常連さんは、熊本は人吉に縁があるそうで、球磨焼酎の話でひとしきりもりあがりました。初めて飲んだ球磨焼酎は臭くてかなわなかったそうですが、今では池袋で球磨焼酎のファンを増やす手伝いをしているそう。

球磨焼酎は、西の鳥飼に東の大石といわれているそうです。鳥飼は飲み慣れているので、次は大石を試さないといけませんね。

また酒器であるヂョカや、盃交わしの文化について、まさか東京築地の呑み処で初対面の人と話す機会があるとは、出会いとはわからないものです。

鳥好の奥様
粋な奥様

「お兄さん、お酒はお強い?隣の立ち飲み屋さんは、生のおつまみが充実してて美味しいのよ。良かったら立ち寄ってごらんなさい、焼き鳥はうちだけどね」と奥様。

「二人でやってる店だから、あんまり流行っても困るんで、普段は取材お断りなんだけど、特別だよ」と写真を取らせてもらいました。

「ご両親を連れて来てね」と、最後はお名刺をいただきました。普段は築地に来ることは多くないのですが、祖父母の顔を見る感覚で折を見て訪問したくなる、そんな素敵なお店でした。

築地の名店「鳥好」で飲んだ「承平」

鳥好の大将
焼き場の大将

普段は純米酒しか飲まないのですが、食事に合うのは、「うますぎない」辛口の日本酒です。特に寒空の日には、普通種の燗はなかなか趣があって良いものです。

そして何より飲ませるお店が素晴らしいこと!酒は飲み物であると同時に、「体験そのもの」としての価値もあると考えさせられます。ひとり沈んだ顔で飲む特定名称酒より、みんなで笑顔で飲む普通酒のほうが美味しい。

鳥好で飲む燗の承平、おすすめです。

銘柄 承平
土佐鶴酒造株式会社
蔵の住所 高知県安芸郡安田町安田1586
種別 普通酒
内容量 1800ml
日本酒度 +5
酸度 1.2
原材料 松山三井他
精米歩合 70%
度数 15度以上16度未満

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